2026/10/07

南米植物よもやま話:植物の向こうに見える「アメリカス」(第9講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラ 第09講


南米植物よもやま話:植物の向こうに見える「アメリカス」


ヒマワリ、ツキミソウ、エンジェルストランペット… これらの身近な植物はいずれもアメリカ大陸を故郷としています。
今回のお話では、ブログ「南米植物文化研究ノート」で出会ってきた植物を紹介しながら、それらを育て、利用し、語り継いできた人々の知恵や暮らしをたどります。
いっぽうで、植物について調べているうちに、私の関心はしだいに植物そのものから、それをめぐる人々の知識や歴史へと広がっていきました。植民地時代以来続く単一栽培の歴史の中で、地域に受け継がれてきた植物文化にはどのような意味があるのでしょうか。チリのマプチェの人々の実践や脱植民地化研究の視点も参考にしながら、植物の向こうに見える「アメリカス」を訪ねてみたいと思います。


日時    2026年10月22日(木) 19:00 - 21:00
発題者    伊香祝子(慶應義塾大学他講師)
オンラインzoom開催 (録画配信アリ)
参加費    500円
申し込み Peatix
    https://abya-yala220.peatix.com
問い合わせ 水口良樹yokishi@river.dti.ne.jp


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラ米講★アビヤ・ヤラでは、金銭的なハードルで学びの機会を得られないということがないように、開かれた学びの場となることを考え、参加費を極力安くおさえて運営しております。同時に、できる限り発題者の方に適正価格の謝金を支払えるようにできるだけたくさんの方に参加いただけるよう心がけております。それゆえに心ある(そして余裕のある)方にはぜひ少額でも寄付をいただけましたらうれしく思います。もしよろしければどうぞご協力いただければうれしく思います。

 

「ラ米講★アビヤ・ヤラ」とは
 ラ米講★アビヤ・ヤラは、カリブ・ラテンアメリカ地域のさまざまなテーマのトピックをともに考え、学び、つながっていくための場として構想されました。 2026年よりさまざまなテーマでアビヤ・ヤラ(ラテンアメリカを指す先住民呼称)各地のさまざまなテーマから、この困難な時代を生き抜くための学びと対話、連帯を模索していきたいと思います。
「ラテンアメリカ探訪」の月例会の一部と「ラ米講★アビヤ・ヤラ」の講座は下記noteでアーカイブ視聴も出来ますので、興味があるトピックスにはぜひアクセスしてみて下さい。

ラ米講★アビヤ・ヤラ https://abya-yala-jp.blogspot.com/
note https://note.com/abya_yala_jp 

2026/09/08

ラテンアメリカ写真/記憶と記録の間に(第8講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラ 第08講

ラテンアメリカ写真/記憶と記録の間に


ラテンアメリカ写真というジャンルは果たして成立するのか。1839年、世界最初の写真とされるダゲレオタイプ、いわゆる銀板写真の発明からわずか一年後には、ラテンアメリカ大陸に写真術が紹介されました。同じ時間経過をたどりながら、あらゆる時空の物語を記録してきたその写真は、他者の記憶をどのように作品化してきたのか。かの大陸ほぼ全域を旅しながら、たどり着いた先で「明るい窓」から遠い異郷の地とそこに暮らす人々の生を切り取った、他とは異なる方形の蓄積を眺めて、朧気に浮かんできた想いや物語を共有してみたいと思います。


日時    2026年9月28日(月) 19:00 - 21:00
発題者    白根 全(カーニバル評論家/ラテン系写真家)
オンラインzoom開催 (録画配信アリ)
参加費    500円
申し込み Peatix
    https://abya-yala219.peatix.com
問い合わせ 水口良樹yokishi@river.dti.ne.jp


 

 

2026/09/05

1973年ピノチェトのクーデター後のチリ、サンティアゴに響く抵抗の歌を振り返る:スラムからの歌声(第7講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラの第7回を公開します。今回は、初めてリアルタイム配信なしの録画配信のみという企画になっております。そのかわりという訳ではないですが、今回は話者の千葉泉さんの素晴らしい歌も聴くことが出来ます。質疑応答コーナーが録画内ではできないため、よろしければぜひコメントや質問を残していただけるとうれしく思います。千葉さんもコメントを楽しみにしておられるとのことですので、コメント機能(note、youtube)もしくはメール(yokishi@river.dti.ne.jp)までお寄せください。


ラ米講★アビヤ・ヤラ 第07講

1973年ピノチェトのクーデター後のチリ、サンティアゴに響く抵抗の歌を振り返る:スラムからの歌声


 キューバ革命(1959年)を契機とした変革の波は、ラテンアメリカ各地に広がり、南米のチリでは1970年に、選挙を通じた社会主義の建設を唱えたアジェンデ政権が誕生した。こうした動向に呼応し、ローカルな伝統音楽に根差しつつ、社会変革の過程に積極的にコミットする「新しい歌(ヌエバ・カンシオン)」とよばれる音楽の運動が花開いた。
 しかし、急進的な改革に反対する富裕層や中間層などの反対により、チリ社会の分断が進行する状況の中、米国が推進する反共主義思想の影響を強く受けた軍部が1973年にクーデターを決行し、政権を掌握した。こうして武力で出現した軍事政権により、反対派の人々に対する過酷な弾圧が行われる中、「新しい歌」の歌い手たちは国外への亡命を余儀なくされた。それでも、「新しい歌」の灯が消えることはなく、亡命した音楽家のみならず、チリ国内でもさまざまな社会層・年齢層の歌い手たちの手で、独裁からの解放と自由の復興を訴える無数の歌が創られ、力強いリズムに乗せて人々を鼓舞し続けた。
 本企画では、軍事政権の末期(1980年代後半)に、サンティアゴ南部のポブラシオン(スラム)に居住し、当時の社会と音楽の密接な関わりを強烈に体感し、個人の道のりという点でも大きな影響を受けた千葉泉さんにお話をうかがいつつ、実際に弾き語りでいくつかの曲を熱唱していただきました。


日時 2026年9月4日(金)収録
話し手 千葉泉(大阪大学名誉教授/ラテンアメリカ音楽演奏家・作曲家)
聞き手 水口良樹(ラ米講★アビヤ・ヤラ)
オンライン録画配信(noteのみ) こちら
参加費 500円
申し込み note

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2026/07/15

女性革命法からサパティスタ蜂起へ:メキシコの先住民運動が世界にもたらしたインパクトと現在(第6講)

 

ラ米講★アビヤ・ヤラ 第06講


「女性革命法からサパティスタ蜂起へ:メキシコの先住民運動が世界にもたらしたインパクトと現在」


サパティスタ運動とは、1994年のメキシコ南部チアパス州の先住民蜂起をきっかけに展開した運動です。蜂起とともに発表された「ラカンドン密林宣言」には「女性に関する革命法」も含まれていて、先住民女性の主張を明確に打ち出したことも、運動の特徴の一つです。サパティスタはチアパス州に根付いた運動でありながら、メキシコ各地の先住民運動とネットワークを構築し、また国際的な支持を得ることで運動を維持してきました。このトーク会では、サパティスタ運動がなぜ起きたのか、どのように展開したのか、そしてその後の社会運動にどのような影響を与えたのかについてお話したいと思います。


日時    2026年7月27日(月) 19:00 - 21:00
発題者    柴田修子(同志社大学)
オンラインzoom開催 (録画配信アリ)
参加費    500円
申し込み Peatix
    https://abya-yala217.peatix.com
 アーカイブ(note)視聴はこちら 
問い合わせ 水口良樹yokishi@river.dti.ne.jp

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2026/05/20

メキシコで考古学調査するってどういうふうにするの?(第5講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラ 第05講


メキシコで考古学調査するってどういうふうにするの?


考古学者というと、地面を掘ったり土器を測定したりしながら、過去の社会を解明する専門家というイメージを持たれるかもしれません。たしかに考古学者の重要な仕事は、古代人が残した痕跡を収集・分析し、それをもとに過去を再構成することにあります。しかし実際の現地調査において、考古学者は単に調査地とラボラトリーを往復しているだけではありません。
考古学調査を計画し、実施し、さらに継続していくためには、現地コミュニティーとの関係を築き、それを維持することが不可欠です。調査には、行政機関との許可申請や各種手続き、土地所有者や地域住民との交渉など、多様なレベルでの調整が伴います。その過程で、多くの人々との関わりが生まれます。現地コミュニティーの理解と協力がなければ、調査を長期的に継続することはできません。そのため、限られた現地調査期間中には、調査の進捗状況を報告したり、地域の祭りに参加したり、ときには住民と飲食を共にしたりしながら、信頼関係を維持することも重要な仕事となります。
本発表では、メキシコ考古学に携わってきた発表者自身の経験をもとに、考古学調査が実際にどのような手順で進められるのかを軸として、現地調査の実態と、その背後にある人々との関係構築について紹介します。


日時    2026年6月27日(土) 15:00 - 17:00 ※土曜日です!
発題者    福原弘識(埼玉大学)
オンラインzoom開催 (録画配信アリ)
参加費    500円
申し込み Peatix
    https://abya-yala216.peatix.com
 アーカイブを見たい方はこちら
問い合わせ 水口良樹yokishi@river.dti.ne.jp


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2026/05/10

画家 富山妙子と近代世界: ラテンアメリカの旅を通じて(第4講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラ 第04講


画家 富山妙子と近代世界: ラテンアメリカの旅を通じて


 2021年に没した富山妙子(とみやまたえこ)(1921-2021)は第一に画家、芸術家であった。音楽や言葉を自らの作品につけスライドを、自ら上映する会を、長きにわたり行っていた。その点では芸術の活動家だ。彼女は戦後日本の炭鉱を歩き回り、その姿を描いた。その後日本のアジアに対する植民地主義、韓国民主化運動や戦時性暴力、アジア人女性の労働運動などとかかわり、テーマとした領域も作品も幅広い。ポストコロニアリズムやフェミニズムの先駆けでもあった。
 没する直前に韓国の延世大学で2021年に「記憶の海へ」と題された富山妙子の作品展が開催された。また昨年、真鍋祐子監修、『越境のアーティスト富山妙子』(皓星社, 2025)が出版された。彼女の活動は歴史や社会に対する批評性に深く根ざしており、残した作品や著作物もいまだに私たちにさまざまなことを示唆し続けている。
 富山にとって1950年代の炭鉱の世界から、広く近代世界の問題へと目をむける契機になったのが、神戸からブラジルへ移民を乗せた船に乗って行った1961年のラテンアメリカへの旅であった。富山妙子、『中南米ひとり旅』(朝日新聞社, 1964)をはじめ富山はたびたびラテンアメリカに触れ、語っている。登壇者はそのことについて調べ、論考を書いた。ラ米講アビヤ・ラヤでは富山妙子の作品、著作を読みとき、彼女がどのような問いを立て、現在へと投げかけているか、また彼女にとってラテンアメリカとはどのような場所であったかを共有したい。


日時    2026年5月25日(月) 19:00 - 21:00
発題者    高際裕哉(慶應義塾大学他非常勤講師、スペイン語圏文学・文化研究)
オンラインzoom開催 (録画配信アリ)
参加費    500円
申し込み Peatix
    https://abya-yala215.peatix.com
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問い合わせ 水口良樹yokishi@river.dti.ne.jp

真鍋祐子監修 『越境のアーティスト富山妙子』(皓星社, 2025)
 購入サイトはこちらから
 
 
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2026/03/19

ボーダーランズ、《わたしたち》の出会うところ: グロリア・アンサルドゥーアを読む(第3講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラ 第03講


ボーダーランズ、《わたしたち》の出会うところ

グロリア・アンサルドゥーアを読む


グロリア・アンサルドゥーアが1987年に発表した『ボーダーランズ/ラ・フロンテーラ』(原題 Borderlands/La Frontera: The New Mestiza)は、自身のチカーナ(メキシコ系米国人女性)としての経験を出発点に、エッセイと詩的なテクストを織りあわせ、さらに英語とスペイン語を交ぜ書きにした特異な文体で「境界」の意味を問い直した革新的な作品です。複数の国、複数の言語、女性と男性、白人と有色人、同性愛と異性愛、散文と詩、生と死といった異なるものどうしが、二分法によって分かたれることなく出会う場所を想像-創造した彼女の著作は、現在も高く評価され、読者にインスピレーションを与えつづけています。
日本語を話すわたしたちはいま、この世界の中で、アンサルドゥーアの提示したものをどのように受け取り、何に思いをめぐらすことができるでしょうか。『ボーダーランズ』を中心に、アンサルドゥーアの作品についてお話ししながら、考えてみたいと思います。


日時    2026年4月20日(月) 19:00 - 21:00
発題者    棚瀬あずさ(ラテンアメリカ文学研究者)
オンラインzoom開催 (録画配信アリ)
参加費    500円 (寄付歓迎)
申し込み Peatix
    https://abya-yala214.peatix.com
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ラ米講★アビヤ・ヤラnote https://note.com/abya_yala_jp



2026/02/26

自分たちの目を持ち、声を伝える:コロンビア・紛争の最前線で闘う先住民族コミュニティメディア(第2講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラ 第02講

自分たちの目を持ち、声を伝える

コロンビア・紛争の最前線で闘う先住民族コミュニティメディア



ラテンアメリカのコミュニティメディアは、地方ニュースの供給源としてだけではなく、「抵抗とエンパワメントの手段」として力強くユニークな存在感を示しています。日本では、阪神・淡路大震災や、東日本大震災の際に、被災する住民が必要とする情報を届ける活動が注目されました。
1940年代、ボリビアの鉱山労働につく先住民の権利獲得運動から始まったとされるコミュニティラジオ。各地の歴史にも触れながら、現在まで続く、長い武力紛争の中にあるコロンビア・カウカ県の先住民族による取り組みを通じて、現地で奮闘する人々の暮らしを紹介します。カウカでは、外部の人々による土地や資源の収奪への抵抗と反省からラジオ局が生まれました。

日時    2026年3月23日(月) 19:00 - 21:00
発題者    柴田大輔(フォトジャーナリスト)
オンラインzoom開催 (録画配信アリ)
参加費    500円(寄付歓迎)
申し込み Peatixより
     https://abya-yala213.peatix.com
 アーカイブを見たい方はこちら
問い合わせ 水口良樹yokishi@river.dti.ne.jp


※前回の講座では第212回とラテンアメリカ探訪から継続したナンバーで開催を告知しておりましたが、元ラテンアメリカ探訪代表より、異議があると不快感をブログで表明されたため、今回よりナンバーを仕切り直しといたしました。世話人の中で例会を継承すると承認され、元代表より解散を知らせるメールにおいて水口が例会は引き継ぐと明示いただいていたので、継続ナンバーとしたのですが、そこは受け入れられていなかったようです。いきなり開催回数が前後し、今後分かりづらくなることになってしまいましたが、ご理解いただけますと有難く思います。

ラ米講★アビヤ・ヤラでは、金銭的なハードルで参加しづらくなることのないように、開かれた学びの場となることを考え、参加費を極力安くおさえて運営しております。同時に、できる限り発題者の方に適正価格の謝金を支払えるよう、できるだけたくさんの方に参加いただけるよう努力しております。ぜひ心ある(そして余裕のある)方にはぜひ少額でも寄付をいただけましたらうれしく思います。もしよろしければどうぞご協力いただければうれしく思います。

 

「ラ米講★アビヤ・ヤラ」とは
 ラ米講★アビヤ・ヤラは、カリブ・ラテンアメリカ地域のさまざまなテーマのトピックをともに考え、学び、つながっていくための場として構想されました。 2026年よりさまざまなテーマでアビヤ・ヤラ(ラテンアメリカを指す先住民呼称)各地のさまざまなテーマから、この困難な時代を生き抜くための学びと対話、連帯を模索していきたいと思います。
「ラテンアメリカ探訪」の月例会の一部と「ラ米講★アビヤ・ヤラ」の講座は下記noteでアーカイブ視聴も出来ますので、興味があるトピックスにはぜひアクセスしてみて下さい。

ラ米講★アビヤ・ヤラ https://abya-yala-jp.blogspot.com/
note https://note.com/abya_yala_jp

2026/02/21

アビヤ・ヤラを改めて考える。そして、問いかける。

 この会の名称に採用された「アビヤ・ヤラ」という呼称(Abya Yalaと書く)、南北アメリカ大陸を指す先住民たちによる呼称というような説明を簡単にしているが、ピンとこないという人も多いのではないかと思う。実際のところ、『ラテンアメリカを知る事典』や『ラテンアメリカ文化事典』などを引いてみても、「アビヤ・ヤラ」についての項目自体がないどころか索引にも載っていない。つまりこれらの「事典」の中で一度も文字として書かれていない。このように実際に日本でアビヤ・ヤラについて言及されている論文や本は非常に限られている。無視されているといってもよい状況である。

 ではラテンアメリカでは知られているのかと言えば、かなり幅がある、という印象だ。
 このアビヤ・ヤラという言葉は、パナマの先住民グナ(ちょっと前まではクナと自称していた)の言葉で「成熟した大地」「生命に書くことのできない血の大地」というような意味を持っている。グナ自体が住んでいた土地は「グナ・ヤラ/ドゥレ・ネガ」などと呼ばれているため、南北アメリカ大陸を指す呼称を決める際に、そのままどうやら持ってきたわけでもなく、特別な言葉として採用されたようである。先住民は長らく、征服されて自らが生まれ住む土地であるにもかかわらず主権を奪われた大地を「インドアメリカ」と呼んでいた。インド人に間違えられてインディオと呼ばれたから、「先住民であるインド人のアメリカ」という意味であった。しかし、そもそもなぜ征服者の一員であるアメリゴ・ヴェスプッチの名前を冠した名前で、自らがルーツとなる土地を彼らに合わせて自分たちまで呼ばねばならないのか。そういう議論の中から採用されたのが、このアビヤ・ヤラである。

 

「私たちの土地や大陸に外国の名前をつけることは、私たちのアイデンティティを侵略者とその後継者の意思にゆだねることに等しい」タキル・ママニ 

 

 アビヤ・ヤラを使い始めたのは意外と古く、パナマから遠く離れた南アビヤ・ヤラの中央に位置するボリビアから始まったようだ。ボリビアのトゥパック・カタリ・インディオ運動(MITKA)の創設者の一人、タキル・ママニが1977年にパナマを訪問した後に提唱したとされている。90年には「先住民族の抵抗の500年」を展開したエクアドルのキト宣言などでもアビヤ・ヤラの名称が使われている(いうまでもなく1992年はクリストバル・コロンによるアビヤ・ヤラ到達と制服事業が始まって500年の年であった)。90年代にはエクアドルでアビヤ・ヤラ・エディトリアル(アビヤヤラ編集工房)が誕生したりコスタリカではアビヤ・ヤラ劇場が誕生したりしている。70年代、90年代につづく波は2000年代に起こっており、それはアビヤ・ヤラ先住民大陸サミットというアビヤ・ヤラの先住民が集まる大陸会議がアビヤ・ヤラの名を冠して(具体的には第2回の2004年から)開催されたことだ。こうした先住民の集会では、自治と主権の回復が重要な要求となっており、非先住民を中心とする国家行政府に対し、先住者としての先住民が尊重され、奪われたさまざまな権利の回復を求める運動となっている。この辺りの内容については、例えば小林致広さんの「「抵抗から権力へ」にむけての新たな転回:グアテマラにおける第3回アビヤ・ヤラ先住民族大陸サミットの意義」などに詳しい。

 

 このブログのはじめににあたる「ラ米講★アビヤ・ヤラ」を始めますにも書いたが、日本も植民地支配を行った国である、という意味でヨーロッパと同じ立ち位置にある。私たちは普段それを思い出すことすらほとんどない環境を生きているが、それはポジション的に思い出さなくても問題がない「強者」のポジションに自分たち自身がいるからだということを改めて考える必要がある。
 そして、日本の植民地支配といって思い出される朝鮮半島、満州、中国租界地区、台湾、東南アジア、ミクロネシア諸島地域といった地域(その多くの地域で虐殺が実行されてきた)だけでなく、より古い沖縄や北海道なども紛れもない日本が征服し、現地の先住民から言語と文化を奪った歴史がある地域であることを思い出す必要がある。アイヌや琉球民族の人々は、今でも「日本民族」より政治的経済的に劣位に押しやられ、言葉を奪われ、土地を奪われ、そんな中で生きることを余儀なくされている。アイヌの人々が言葉を失うだけでなく、自らのルーツ自体を透明化することによって子どもを「和人」であるかのように育てることによって生きのびさせる方法を採らざるを得なかったということ一つをとっても、その差別と抑圧の苛烈さがひしひしと伝わってくる(こうした問題を考えるのに『アイヌがまなざす:痛みの声を聴くとき』や『アイヌの世界に生きる』などを手に取ってみるのもよいだろう)。
 カナダの先住民であるタニヤ・タラガの『私たちの進む道:植民地主義の陰と先住民族のトラウマを乗り越えるために』では、先住民の現代までつづく差別と暴力の中を生きるという経験は、民族としてトラウマを抱えた生を生きさせられており、その回復が非常に重要な問題となっているとそのあまりに激しい状況を書き綴っている(それは同時にアフロ系子孫がアビヤ・ヤラ、特にアメリカ合衆国で生きる際の苦しみにもつながっている)。
 
 新しく企画を始める(というかとりあえず継続させる)ために、どのような名前をつけるか、ということを考えたとき、私たちが今生きる現代世界、加速度的に平和や平等、人権といった理想が金儲けや力による服従の正当化という論理によって破壊されていき、プロパガンダにより、ヘイトが弱者への敵意を剥き出しにし、暴力を蔓延させることで管理国家化、警察国家化を推し進める、まさにディストピアへの転落をものすごい勢いで始めているというこの現代世界において、少しでも立ち止まり、考え、そういった暴虐の嵐に対してNOと声をあげ、裸の王様を引きずり下ろし、ともに一緒に生きていける社会を捜す旅をする、そういう入口になる場をつくりたいと考えたのだ。
 アビヤ・ヤラという壮絶な虐殺と搾取の中を生き抜いてきた人びと、今も闘い続けている人々のことを通して、今まさにファシズムが立ち上がり、民主主義から独裁社会へと転換しようとしているこのときにこそ、民主的社会を求め、平等と正義を、暴力の記憶の継承を、その断罪を、取り残さない社会のあり方を模索しているアビヤ・ヤラのさまざまな生き方を通して考える機会となってほしいと考えたからである。
 
 なんだか決起文第2弾みたいになってきてしまったが、日本でこれほどアビヤ・ヤラという先住民自身による呼称が透明化され、「アメリカス」といった西洋中心主義を大きく引きずった名前がありがたく重宝される状況は、日本自体が植民地主義やその暴力、搾取を今なお引きずり、自覚できていない、向かい合いきれていない、そういうことの現れなのではないかと思い、少しでもこうした叫びがあり、その叫びに応えることこそ、かつてたくさんの人々を虐殺し、収奪してきた人々の末裔ができる、一つの実践なのではないかと考えるからである。
 2025年に私が編者となって出した『日本から考えるラテンアメリカとフェミニズム』の序章でもアビヤ・ヤラについて書き、また25年のGWに新宿で開催されたウカマウ集団の映画上映会で光栄なことにトークに読んでいただいた時にもアビヤ・ヤラという名前を紹介させていただいた(26年に出た『現代ラテンアメリカ社会を知るための47章』の第1章にも書いた。つまり書きまくっているのである)。そうすると、多くの人から、そんな声があるとは知らなかった。この言葉を大事にしたいという声を返していただくこととなり、ああ、やはり大切なことは、きちんと声に出して伝えていかなければいけないのだなと痛感した。だからこそ、この会を始めるにあたり、アビヤ・ヤラ、という名前を入れたかったのだ。彼らの叫びを消費せず、尊重し、ともに考え、生きていくためのそんな道を、ぜひ皆さんと一緒に考えながら探して行けたらと思う。 
 同時に、真面目に難しいことばっかりをやっていても行き詰まってくるものである。楽しくやる、リラックスしてやる、面白い話をする、いろいろな試みを始められたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(水口)

2026/02/07

noteでアーカイブ

 ラ米講★アビヤ・ヤラおよびその前身のラテンアメリカ探訪のアーカイブ(の一部)については以下からアクセス可能です。更新は不定期となっておりますが、終わった講座をあとから視聴することが可能です。

noteラ米講★アビヤ・ヤラ 

 

南米植物よもやま話:植物の向こうに見える「アメリカス」(第9講)

 ラ米講★アビヤ・ヤラ 第09講 南米植物よもやま話:植物の向こうに見える「アメリカス」 ヒマワリ、ツキミソウ、エンジェルストランペット… これらの身近な植物はいずれもアメリカ大陸を故郷としています。 今回のお話では、ブログ「南米植物文化研究ノート」で出会ってきた植物を紹介しなが...